病院紹介の業者は高い

 また、「ほかに財産はあるのかどうか聞いておいたほうがいい」とアドバイスするのは、『70歳をすぎた親が元気なうちに読んでおく本』(アスペクト)の著者で、フリーライターの永峰英太郎さん。

「親の世代はやたらと民間の保険に入っている人が多いので気をつけたほうがいいでしょう。実家に届いていた郵便物を一つずつ確認して加入している保険会社を探り出しました」

 保険金を受け取るには、何カ月も時間がかかる。それが済まなければ相続の準備に取り掛かれないので、なるべく元気なうちに財産目録などを書いてもらっておきたい。

 そして、葬儀会社は事前に契約をしていなかったら要望を聞いておくことも忘れてはならない。C子さん(フリー編集者・47)は、10年前、父(享年78)が末期がんで息を引き取る前に、親戚の叔母から思わぬ情報を聞いた。

「病室から霊安室にお父さんが運ばれた後、『車の手配やお葬式の準備は済んでいるのか』とか、いろいろと聞いてくるけれど、病院が紹介する業者に任せると高くつく。葬儀会社を決めたほうがいい」

●聞き出すコツは…

 例えば、病院から自宅へ、もしくは葬儀場まで遺体を運ぶ車をレンタルすると、数万円単位で請求される。すべてがパッケージ料金になっている葬儀会社のプランのほうが安く済む。案の定、霊安室にはファイルを片手に白衣を着た業者が控えていて、葬儀のプランを提案された。あらかじめ声をかけておいた葬儀会社から、「◯◯典礼が迎えにくるからけっこうです」と断るようアドバイスを受け、C子さんはその通りに答えた。

 葬儀会社の多くは役所への死亡届の提出、火葬場の予約なども代行してくれるので、遺族は何もしなくて済む。遺体の安置や搬送などが一式パックになっていることがほとんどなので、近所に複数業者がいれば、見積もりを取っておきたい。宗教や家紋を親戚から聞いておくと、お焼香の作法やお供えなどのしきたりも教えてくれる。

 親に聞きにくいことを「聞き出す」ためにはコツがある。識者の話などから総合すると、(1)入院や通院先のカフェテリアで、好きなものを飲んで食べてもらい、機嫌がいいときにさりげなく話を切り出す。ただし、それは最終手段で、なるべく元気なうちに聞いておきたい。(2)入院している友人や親戚の安否を尋ねながら「お父さん(お母さん)はどうする?」と聞いてみる。(3)身内で不幸があったとき、お葬式の後、自宅で精進落としをしながらじっくり話を聞くと、本音が聞き出せることもある。

 悔いの残らない看取りをするためにも、時間をかけて周到な準備をしておきたい。(ライター・村田くみ)

AERA 2017年7月10日号