地に落ちたイメージを回復させて、業績も上向かせる……。これまで、多くの企業が直面し、その実現に腐心してきた。これは、個人の場合でも同じこと。落ち込んだ底が深ければ深いほど、復活には時間がかかる。AERA 2017年7月3日号では、「どん底からの脱出」と銘打ち、見事V字回復した企業を大特集。そのとき企業は、個人は、何を考え、どう振る舞うべきなのか。
アイデンティティーに彷徨い、襲い掛かる病に倒れ、激しいバッシングにさらされる。辛酸をなめながら、それでも歩み続けた人を支えたものは何なのか。今回は、いくつもの大病を乗り越え、現在も歌手・俳優・タレントとして活動する堀ちえみさんに話を聞いた。
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一度きりの人生、限られた時間の中でどう生きるか。そんな中で私がいま一番大事にしているのは、頑張りすぎないこと、悩みすぎないことなんです。
そう思うようになったのも、大病を幾度も乗り越えたから。最初は34歳の時。4番目の子どもが生まれて10カ月ほど経った頃です。家族そろってのグアム旅行からの帰り道、関西空港に降り立った途端、ポンという破裂音がおなかの中でしたんです。その後の腹痛はもう……。子どものためにとなんとか家にたどり着いたんですが、とうとう耐えられなくなり、深夜に病院へ駆け込みました。
診療時間外で、看護師さんしかいない。海外からの帰国後ですから、感染症などを調べる検査も必要。朝になって医師が到着し、さらに検査が行われましたが、原因がわからない。
開腹手術の少し前。エコーで膵臓が見えなかったのを不思議に思った主治医が、念のために胃カメラで膵臓を見たら炎症が確認できた。それで特発性重症急性膵炎だと分かったのです。
「絶飲食、絶対安静」の治療に切り替わったんですが、あのまま開腹手術を受けていたら、助からなかったかもしれません。
2度目の大病は、48歳。腰や股関節が痛くて、歩くのさえつらい。主人に引っ張られるように整形外科を受診したら、レントゲン検査で「股関節が壊死している」と……。厚生労働省の指定難病である特発性大腿骨頭壊死症でした。手術しかないと聞き、良くなるためならと即決。今は人工股関節が入っています。