病院長:料金を踏み倒そうとする飼い主も少なくないですよ。「治らないなら払わない」と胸倉をつかまれたり、夜間にレクサスでやってきて「財布を忘れた」と虚偽の住所を書いて逃げようとしたり、子どもに「お母さんが今度払うから」と言わせて病院のペットフードを持ち帰ったり。けっこう悪質です。100万円を超える未払いを抱える病院も多いようです。

開業医:うちは完全予約制を取ってから、お金のトラブルが明らかに減りました。未払いなどが多いのは夜間診療ですよね。
病院長:年中無休で診療した時期もありますが、心が折れました。深夜2時に電話をかけてきて、「いまから行く」と言ったきり来なかったり、来てもお金を払わなかったり。金銭的にも、とてもペイしません。最近は地域の病院が当番制で夜間診療を行うケースも多いようです。協力しているのは、気持ちの熱い医師ばかりですよ。容体の急変や事故は仕方ありませんが、飼い主と普段から密なコミュニケーションを取っておくことで、夜間救急はある程度減らせると思います。

開業医:犬の殺処分ゼロに協力しているんですが、誠実なボランティアがいる一方で、掃除もせず、猫にエサをやるだけという困った人もいますよね。

病院長:けがした猫を連れてきて、お金を払わずに置いて帰ろうとする無責任な「ボランティア」もいます。以前は、野良猫の避妊・去勢手術をするときは半額にしていたんですが、首輪を付けた猫まで「野良猫です」と連れてくる人も出てきました(笑)。結局、しっかり運営しているボランティアに限って、「特例として」減額を申し出ることにしています。

●明らかに風邪でも検査

開業医:動物病院は自由診療なので、料金設定は病院ごとに違います。初診料も1千円くらいから1万円近くまで開きがありますし、エックス線もうちは1枚4千円ですが、7千円程度の病院も多いそうです。

大学勤務:大学病院の料金はやはり高めです。薬剤やモニター機器のコストもあるので、手術が前提だと犬猫ともに、初診と検査で5万~7万円くらい。最終的には30万円くらいかかる。半数くらいの飼い主はペット保険に入っている印象です。

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