「コンビニ百里の道をゆく」は、47歳のローソン社長、竹増貞信さんが、経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづる連載。前回に続きAERA編集長・井原圭子によるインタビューをお届けします。
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──ローソンのトップに就任されて、ご家族の反応はいかがでしたか。
仕事に関しては家庭であまり話をしないし、妻も多くは聞きません。三菱商事時代、「アメリカ駐在になった」と伝えたときに、「それじゃ、引っ越すのね」と言われたくらいで(笑)。
──お子さんたちは?
ローソンに入った2014年、年少だった息子とコンビニ巡りをしたことがあります。入社後しばらくはとにかくたくさん店舗を見ようと、休日も自転車で自宅近くを回っていまして、一日留守にするので妻が「たまには下の子を連れて行って」と(笑)。公園に立ち寄りながらコンビニを巡るつもりだったのですが、わざわざ行こうとしなくても息子は「のど渇いた、コンビニ行きたい」「足すりむいた、コンビニ行きたい」とすぐコンビニに行きたがる。子どもたちとの「近さ」を実感しました。
そうなんです。上の息子は中3でしたが、よく行くお店が決まっていました。「A店は店員さんがいつも忙しそうであいさつしてくれない」「B店は本を立ち読みしていると片づけにくる」。よく行くC店は「立ち読みしていても気楽だし、おばちゃんが『また来てね』と声をかけてくれる」と言うんですね。中学生でさえ、看板ではなく「人」でお店を選んでいた。お客さまは街をよくしたいという思いがあるお店に来てくださるのだ、と再認識しました。
──新浪さんはおにぎり、玉塚さんはコーヒーに力を入れました。竹増さんは何を強化しますか。
私は、一つに力を入れるより「総合点」を上げたいと思っています。午後から夕方にかけて、お客さまがゆっくり商品を選べる時間帯に、総菜、サラダ、牛乳、たまごなどでお客さまから「平均点以上」の評価をいただける商品がそろっていることが重要です。サラダの商品数を16から26に増やし、豆腐、納豆、牛乳は常に複数種類を用意しておく。その上で、常温総菜、チルド飲料、冷凍食品まで網羅すれば、朝食、ランチ、夕飯のおかずから翌日のお弁当まで、お客さまの生活全般をサポートすることが可能になる。どんな生活にも寄り添えるお店を目指します。
※AERA 2017年6月19日号