アエラの連載企画「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回は成城石井の「ニッポンの課長」を紹介する。
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■成城石井 商品本部 商品部 菓子課 課長 加藤寿人(33)
平日の朝10時。横浜市の成城石井美しが丘店内を来店者が回遊する中、菓子課課長の加藤寿人は撮影直前まで陳列整理をしていた。
成城石井が目指すのは「高品質」スーパーだ。一つひとつの商品単価は決して安くはないが、こだわりを持ち、良質なものをお得に販売している。
現在、成城石井は全国に148店舗あり、店ごとに規模や客層、人気商品は異なる。加藤は商品購入の決定権を持ち、全社的な菓子売り場の方向づけを行う立場だ。原料の買い付けから行っている商品もあり、「商品の“ストーリー”を大切にしている」とバター一つの味からこだわっている。
小売りに興味を持ったのは大学生時代だ。電気通信大学電気通信学部知能機械工学科(夜間)に通学するかたわら、4年間本屋でアルバイトに励んでいた。狭い店内で書籍を積み替えたり、販促物を作ったりすることにやりがいを感じていた。そんな時、通学途中にあった成城石井の店に初めて入った。
「他のスーパーの雰囲気と違って面白い」
10坪弱の店内に、普段見かけない商品や輸入チーズ、瓶ジュースが積み上げられている。店内に入ると、気持ちが高揚する自分がおり、徐々に食品に興味を持ち始めていった。
入社したのは2007年。初めての仕事はグロサリー担当だった。店舗で調味料や加工品などの発注、売り場のメンテナンスの経験も経て、09年に商品部菓子課のバイヤーになった。
以前は「コミュニケーション能力ほぼなし」と自己評価していたが、来店者やスタッフとのやりとりを通じて、「得意というか、鍛えられました」。
社内結婚した妻との間に、2人の子どもがいる。休日は子どもと公園へ行ったり、外出先で見かけたセレクトショップで食のチェックをしたりするのも日課の一つだ。
「心がけていることは固定観念を取り払って、いろいろな意見に対して耳を傾けること。柔軟な発想を大切にしていきたいです」
(文中敬称略)
(編集部・小野ヒデコ 写真部・東川哲也)
※AERA 2017年3月6号