
2030年。あなたの子どもは何歳だろうか。ちょうどこの頃、社会の中核を担うのは今の中高生だ。AI(人工知能)の進化で仕事も働き方も急速に変わり始めた。変化の加速度を考えると、学校選びの基準もこれまでと大きく違ってくる。もう「教育改革」など待っていては、わが子の成長に間に合わない。AERA 2017年6月5日号では、「AI時代に強い中高一貫・高校選び」を大特集。アエラが注目する中高一貫校・高校の中から、東京都立多摩科学技術高校を紹介する。
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「えー、我が社が開発したのは、必ず起きられる目覚まし時計です。名前は『逃げるは恥だが役に立つ』です」
坂本陸さんのプレゼンにどっと笑いが起きた。東京都立多摩科学技術高校(多摩科技)の1年生の「科学技術と人間」の授業。この日は、「論理的思考」がテーマで、前半で筋道を立てて考え、プレゼンするコツを学んだ。後半は四つのチームで画期的な商品やサービスのアイデアを練る実践編。トリを飾るのが坂本さんのチームだ。
「アラームが鳴ると同時に時計が逃げます。大音量で時計は洗面所まで走っていく。お客様が追いかけていくと、すぐに顔が洗えるというわけです。起きないとゴキブリが投下されたり、軽度の電気ショックが流れます」
今回、アエラが「IT・サイエンスの素養」と「思考・探究力」という観点で注目した多摩科技は2010年に開校した新鋭だ。開校からわずか7年目の今年、男子生徒が東大工学部に推薦合格。しかもそれは、同校の授業時間内で取り組んできた「枯れ葉を使って重金属を回収する研究」の成果が認められた結果だ。猪又英夫副校長が言う。
「我が校の最大の特徴は、カリキュラムの中心に『研究』を置いていることです。生徒は高2から2年間、一つのテーマにじっくり取り組みます」
生徒は2年に進級する際に「バイオ」「エコ」「IT」「ナノテク」の4領域から一つを選択し、各自で興味のあるテーマを設定。高3の秋に学術論文にまとめ、大学教授らを前に発表する。高校卒業時点で大学の学部生並みの経験ができる仕組みだ。