管理組合は、大規模修繕と並行して設備機器の更新、改修も担当理事を決めて取り組んでいる。その対象は、空調と照明、植栽、防犯カメラ、駐車場設備など多岐にわたる。
いずれも数千万から億単位の費用がかかる。
橋本氏が力を入れたのは照明のLED化だった。これまで共用部の照明だけで年間1億円以上の電気料金を費やしていた。
これらを一挙にLEDに換えて電気代を半分程度に抑え、他の修繕費用に充てようと考えた。問題は、どのメーカーのLEDを使うか。業者の選定だった。
高所得層が集まるタワーマンションは、企業の元役員や大学教授、官公庁の元幹部といった「専門家」が少なくない。LEDひとつとっても、ウチのを使って、あれがいい、これがいいと意見が寄せられる。恣意的に処理したら大問題になる。
橋本氏は一計を案じた。住民からの推薦を公開したのだ。
「大手メーカー、5~6社の提案があり、ぜんぶ住民に知らせました。そのうえで、私が要件書をつくって、どれがいいでしょうかと問いかける。調光に対応できるものは1社しかなくて、そこに決めました」
タワーマンションは住民の合意形成にも手間がかかる。
今後、住棟のセントラル給湯・暖冷房システムの改修が待ちかまえている。ホテル同様ガス熱源は下にあり、24時間、温水が流れているが、そろそろ更新しなくてはいけない。費用は約20億円。引当金を積んではいるものの予断を許さない。橋本氏はしみじみと言う。
「超高層マンションに必要なのは、改修のガイドライン。知見を持ち寄って早急につくるべき。行政にも働きかけたいですね」
●結局は管理組合
タワーマンションには「盲点」もある。たとえば、排水管だ。住戸数を多く設計したために縦のパイプシャフトが部屋壁のなかを貫く。低層階ではレイアウトの都合で排水管を横に這わせたりもしている。流れが滞ると腐食が始まる。排水管が建物の運命を握る。