いい言葉を聞いたことがない。「少子高齢化」「福祉の縮小」「年金消滅」……。私たちの老後は本当に真っ暗なのか。このまま、ひたすら下流老人化を恐れる人生でいいのか。どこかに突破口はあるはずだ。「年を取るのは怖いですか?」――AERA5月15日号は老後の不安に向き合う現場を総力取材。全身がんを告白した俳優の樹木希林さんに、死生観について聞いた。
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アエラの取材依頼に当初は丁重な断りの電話があった。だが「こういう取材は今回きり」の条件で、樹木さんは「なんでも聞いていい」と重い扉を開いてくれた。
「老い」とか「死」とか、そういうテーマの取材依頼がたくさんきて、困っちゃうのよ。何も話すことなんてないんだから。「死をどう思いますか」なんて聞かれたって、死んだことないからわからないのよ。ひとつ(取材を)受けるとキリがなくなるでしょ。だから全部お断りしているんです。映画の宣伝のときは仕方ないけど。
私がこういう取材を受けるメリットはどこにあるの? あなた方のメリットはわかるの。えっ、私の話で救われる人がいるって? それは依存症というものよ、あなた。自分で考えてよ。
死はいつか来るものではなく、いつでも来るものなの、私の場合。全身がんですから。だから仕事も先の約束はしない。せいぜい1年以内。仕事の交渉は留守電とファクスで全部自分でしている。この間も「2年契約で」なんて話が来たんだけれど「とんでもない。よしてください」って言ったの。「そのほうがおカネ的にもいいでしょう?」って先方は言うんだけれど、「2年先(の命)なんて保証できない。持たせようと思うほうが苦しいから勘弁してください」って言ったわ。
●手土産、謝礼は不要
ところがさ、以前聞いてびっくりした。聖路加(国際病院)の日野原さんは10年先まで計画が入ってるっていうじゃない。いま100歳過ぎていらっしゃるでしょ。あなた、そういう方を取材したほうが絶対いいわよ。私なんかより。