『沖縄を売った男』の著者の立ち位置に関して、先に「第三者的」と表現したのには理由がある。著者の竹中は「官邸」に通じているジャーナリストだ。その著者が「あとがき」で、沖縄の米軍基地反対運動を取り上げた東京メトロポリタンテレビジョン(MXテレビ)の番組「ニュース女子」(1月2日放送)をめぐる問題に触れている。
竹中は、この問題に関して「沖縄タイムス」が1月12日付社説で「事実でない情報で敵をつくり、快哉を叫ぶ。民主主義の根幹を揺るがす危険な動きである」と論難したことを紹介し、こう記す。
「本書のなかでは、たびたび沖縄の地元二紙の記事を批判的に引用させてもらったが、今回ばかりは同意する」
そのうえでこう明かす。
「沖縄をめぐり、型にはめた報道をするのは革新系のメディアだけではない。保守系、右寄りのメディアもそうだ。沖縄の保守政界からは、革新系だけでなく保守系のメディアに対する批判もたびたび聞かされた」
沖縄の「今」と向き合おうとするとき、異なる「事実」が幅を利かし、もう何年も前から右派と左派、あるいは沖縄と「本土」の間で対話が成立していないように感じられる。
「沖縄タイムス」の連載記事を再構成、加筆した『誤解だらけの沖縄基地』(沖縄タイムス社編集局編著、高文研)が書籍化された。沖縄の基地に関し、ネットに散見される事実誤認や意図的なデマにデータ・史実で逐一反証する、いわば「フェイク対策本」だ。
こうした誤解やデマについて編集局長の石川達也は「芽を摘み取らなければ、人から人へと渡り歩き、あたかも『真実』のように振る舞い、沖縄問題の本質をぼかし、解決を妨げるという危機感が募っていた」と吐露する。
主に沖縄県民に向けて発行している地元紙が、県民には周知の事実を、あえて「本土」に向けて発信しなければならない。こうした状況を異常と感知できないほど、「本土」の知力と感性は鈍っていまいか。