容疑者は、子どもたちの登下校を見守っていたはずの保護者会会長。社会は無力感にさいなまれている。子どもを守る方法は、もうないのか。
千葉県松戸市に住む小学3年生の女児(当時9)が登校中に行方不明になり、遺体で見つかった事件。女児が通う小学校の保護者会会長が死体遺棄容疑で逮捕されるという想定外の事態に、波紋が広がっている。
地域の防犯協会の理事を務める白石彌登美(やとみ)さん(77)はショックを隠し切れない。
「防犯意識の高い地域で、地域ぐるみで子どもを守ってきた。不審者はマークしていたが、地元で先頭に立って見守りをしていた人が逮捕されるとは……」
●見守る人同士が視界に
松戸市内の別の学区で小学校1年(6)と4歳の娘を育てる母親(38)は早期の解決を願っていたが、渋谷恭正容疑者(46)の逮捕でさらに不安になった。
「顔見知りを多くしていくのが防犯のセオリーだと信じていたのに。どうしたらいいのか」
都内に住む女性(40)は意を決して、小学3年生の娘(8)に「大人の男の人に挨拶されても無視しなさい」と教えたという。
「もう誰も信じられない。子どもに『どんな人も疑え』と教えるのはどうかと考えましたが、仕事があるので登下校の付き添いは無理だし、殺されるぐらいなら疑うほうがいいと思って」
地域社会を襲う底知れぬ不安。学校安全に詳しい大阪教育大学の藤田大輔教授は、現状をこう懸念する。
「地域や大人に対する不信感を子どもに植えつけてしまうと、その子は将来、地域を守る人になりません。10年、20年後の治安の悪化につながります」
地域の見守りや防犯活動をする人の中に犯罪を起こす人が紛れ込む事態は、どうすれば防げるのか。藤田教授は、
「見守りを特定の人だけに任せないこと。多くの人が少しずつ、できる範囲で参加する。多くの目が関わることが重要です」
見守る人が増えれば網の目が細かくなる。見守る人同士が互いの視界に入れば、滅多なことはできなくなる。