確かに金にはならないだろう。けれども、文明と自然のインターフェースに立ち、自然からの贈与を人間社会に有用なものに変換する仕事には、人間性の根源に触れる何かがある。うまく説明できないけれど、そのような場では、たぶん都市とは違う時間が流れているのだと思う。人工的な環境にいる限り決して発動することのない脳内部位が活性化し、それまで使うことのなかった知覚が働きだす。自分の身体が豊かな、手つかずの埋蔵資源で満たされていることに気づく。農業の現場では、そういうことが起きているのだと思う。自分自身の豊かさに気づくことのほうが、現金収入の多寡よりもたいせつだと彼らは(そういう言葉づかいはしないだろうが)直感したのだと思う。

 周防大島で、鶴岡で、朝来で、あちこちで農業のうちに可能性を見いだして、都市生活を離れた若者たちと出会う。彼らの上に豊かな祝福と加護がありますように。

AERA 2017年4月10日号

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