1951年創刊の「鉄道ピクトリアル」のバックナンバーは60年代からそろう。「客車や車両の特集が人気」とフロアリーダーの広瀬さん(写真部・堀内慶太郎)
1951年創刊の「鉄道ピクトリアル」のバックナンバーは60年代からそろう。「客車や車両の特集が人気」とフロアリーダーの広瀬さん(写真部・堀内慶太郎)

 国鉄が解体し、7社のJRが発足して30年。株式上場を機に、脱テツドウにシフトする会社があれば、お先真っ暗な未来にアタマを抱える会社あり。現在のリストラなど働く人たちの労働環境悪化は、国鉄解体に原点があるとの指摘も。「電車の進化」などさまざまな切り口で30年を検証していく。AERA4月10日号では「国鉄とJR」を大特集。

 解体から30年を経て、それでもなお根強い人気を誇る「国鉄」、JNR。なぜかくも懐かしく感じてしまうのだろうか。“テツの聖地”といわれる「書泉グランデ」で、国鉄グッズについて話を聞いた。

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 古書の街、東京・神保町。老舗書店「書泉グランデ」は、知る人ぞ知る鉄道の聖地だ。6階鉄道フロアは、雑誌も新刊も漫画も鉄道にかかわるものだけ。

「駅そばの情報とか普通列車の編成表とか、かゆいところにも手が届く。情報収集だけでなく、いると落ち着く神聖な場所」

 常連の沼田勇作さん(36)はそう言う。同店フロアリーダーの広瀬祐理(ゆうり)さん(40)に、おすすめの「国鉄を感じる本」を教えてもらった。「鉄分」入門編は、1978年初版の絵本『でんしゃがはしる』(福音館書店)の復刻版だ。

「この絵本で鉄道入りした世代に売れまくっています。黄緑色の103系が山手線を一周する姿が懐かしいのでしょう」

 国鉄職員の働く姿を写した写真集『国鉄「東京機関区」に生きた 1965~1986』(えにし書房)は、当時の息づかいが伝わる。

「こんな線路脇で『小さな焚火(たきび)をたいてよもやま話』って。こういう時代があって今に至るんだなと思いますね」

 鉄道紀行作家、宮脇俊三(1926~2003)の『時刻表2万キロ』は、すでに廃止された国鉄路線の話が登場する。

「他の書店員さんに、『宮脇さんはマストですよねえ』ってつぶやいたら、誰ですかって。逆に驚いちゃって。ここでは芥川や太宰と同列の方なんですけど」

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