ホワイトハウスは魑魅魍魎の伏魔殿になってしまったのか(※写真はイメージ)
ホワイトハウスは魑魅魍魎の伏魔殿になってしまったのか(※写真はイメージ)
この記事の写真をすべて見る

 魑魅魍魎(ちみもうりょう)、混沌──。ドナルド・トランプ新大統領のホワイトハウスに当てはまるのは、そんな不穏な言葉だ。就任70日で、難関と逆風に必死に刃向かっている。

「爆弾発言」とはこのことだ。

「トランプ氏の選挙陣営とロシア政府の関係について、昨年7月から捜査している」

 3月20日、米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー長官が、下院情報特別委員会で行った証言だ。日本のようにヤジがなく、いつもは静かな連邦議会議事堂内に突然、異様な空気が立ち込めた。

 同委員会は、ロシア政府が米大統領選でトランプ氏が有利になるように干渉していたのかどうか調査中だった。コミー長官の発言で、さらに現職大統領の側近がロシア政府に協力していたかもしれない可能性が浮上したのだ。先走った側近のスタンドプレーに留まるのか、トランプ大統領自身も関与したのか。今後の捜査の行方によっては、米大統領が「犯罪人」とならないとも限らない。

●FBI徹底解明の構え

 もし、疑惑が事実であれば、その罪の重さは計り知れない。コミー長官は、はっきりと言い切った。

「米国が世界で輝いているのは、時に混乱もあるが、自由で公正な素晴らしい民主主義と、それを支える選挙制度があるからだ。だから、外国が民主的な米国の選挙に干渉し、破壊し、汚すのは、とても深刻な問題だ。従って、米国人が、外国による米国への干渉に加担しているのであれば、これほど重大な事態はない。FBIはこのために『誰が何をしたのか』を解明しようとしている」

 コミー長官は同時に、トランプ大統領が「選挙に勝利する直前、オバマ前大統領がトランプタワーを盗聴していた」と根拠もないツイートをしたのを、「事実ではない」と釘を刺した。

 ところがその2日後、下院情報特別委員会のニューネス委員長は突然ホワイトハウスを訪れ、アポなしで大統領と会談後、内容について「オバマ政権の情報機関はトランプ氏の側近を『偶然』監視していた」と大統領に伝えたことをメディアに明かした。

 ホワイトハウス周辺は、騒然とした。大統領選挙のロシア政府介入疑惑を調査する独立機関の委員会トップが、他議員と情報共有することもなく、入手した情報を大統領本人に伝えたということだ。トランプ大統領は報告を聞いて「なんとなく正当化されたな」とニューネス委員長に話したという。

次のページ