開発初期は非接触式の電子マネーが存在しておらず、メリットも伝わりづらかった。「どういうものか説明しても理解してもらえませんでした」と樋口次長は振り返る。東京駅や新宿駅のような大量の入出場がある駅でも使えるよう、読み取りに要する時間は0.2秒。当初は電池を内蔵していたが、切符としては不便ということで電池を使わない方法も模索した。それらを克服するアイデアの一つが、「タッチアンドゴー」方式だ。タッチしやすいよう読み取り部分を約13度傾けてLEDで明るくする工夫も生まれた。
「非接触式なのですが、実際には読み取り部分に券をタッチしてもらう。そうすることで読み取りエラーを減らしていくことができると考えたのです」(樋口次長)
なぜ、Suica研究を継続できたのか。樋口次長は言う。
「絶対に成功するという自信があったわけではないですが、発足時から多角化の要請を受け、様々な事業を試してきたことがよかったのかもしれません」
(編集部・福井洋平)
※AERA 2017年4月10日号