北朝鮮が、また撃った(※写真はイメージ)
北朝鮮が、また撃った(※写真はイメージ)
この記事の写真をすべて見る

 北朝鮮が、また撃った。トランプ米大統領への「Look at me」にしては、事態はより深刻だ。金正男氏暗殺に続く緊張が東アジアを包む。

 3月6日午前7時36分、韓国軍のイージス艦「世宗大王(セジョンテワン)」の早期警報レーダーが反応した。北朝鮮からの弾道ミサイルだ。

 その2分前、北朝鮮の首都・平壌から西に123キロ離れた西岸の東倉里(トンチャンリ)。山に囲まれた平地に一定間隔を置いて並んだ発射台から一斉にミサイルが打ち上げられた。その数、4発。朝鮮半島を横断し、約1千キロ飛び、うち3発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落ちた。

 発射から1時間もたたないうちに韓国軍合同参謀本部は発射を発表した。日米韓は発射を非難するコメントを出し、その日のうちに各国首脳らが電話で連携を確認した。

●避難訓練のような慣れ

 誤解を恐れずにいえば、日米韓は手際がいい。もちろん弾道ミサイル発射が許されるわけではない。ただ、韓国国防省によれば、2011年に金正恩・朝鮮労働党委員長が最高指導者になってから、弾道ミサイルは計28回、46発発射している。日米韓も同じような手順を何度も繰り返している。ある日本政府当局者は自嘲気味に言う。「避難訓練をやっているようだ」

「訓練」には続きがある。北朝鮮はたいてい発射翌日に国営メディアが発射を報道する。正恩氏が現地で指導したとして、成果をアピールする。写真には満足げな正恩氏の笑顔が写る。日米韓は報道ぶりを分析する。

 今回もそうだったが、少し違った。北朝鮮メディアの報道によれば、発射訓練を実施したのは、有事の際に在日米軍基地への攻撃を担う朝鮮人民軍戦略軍火星砲兵部隊だという。日本も標的だと強くにじませている。こうした表現は極めて珍しい。

 とはいえ、北朝鮮は中距離弾道ミサイル「ノドン」をすでに実戦配備しているとされる。射程は約1300キロ。日本のほぼ全域がその中に収まる。在日米軍を攻撃するために開発されたと言われており、日本が標的になるのは織り込み済みだ。では、何を意図しているのか。韓国統一省関係者は、こう見る。

次のページ