SABU、荻上直子ら日本人監督作品も話題になったベルリン国際映画祭。だが、国内で好調にみえる日本映画には、海外進出へ足枷があるという。
是枝裕和や河瀬直美が「カンヌの申し子」なら、SABUは「ベルリンの申し子」だろう。先のベルリン国際映画祭(2月19日閉幕)で通算9度目、コンペティション部門には2度目の参加となったSABU監督。新作「Mr.Long/ミスター・ロン」は、主演に台湾の俳優チャン・チェンを迎え、日本と台湾で撮影されたインターナショナルな快作だ。
ドイツ、台湾、香港で配給が決まっているが、これはそのまま共同製作に名を連ねる国と地域。海外の観客に見てもらうには、共同製作が近道という好例だろう。世界的にも共同製作の波は止まらない。今年のベルリンでもコンペ作18本のうち10本が合作。もはや海外映画祭において共同製作は主流派だ。
●合作協定締結できない
翻って日本の現状はどうか。大半の映画は海外を視野に製作はされない。まずは国内マーケットが対象で、製作費回収を主眼に勝負する。そのためドラマや漫画が原作の大衆的でドメスティック色の濃い作品が目立つ。
企業がリスクを分散するべく集まって製作する「製作委員会方式」が多いのも近年の傾向だ。語り口はテレビ的な感覚に寄りがちで、監督の個性が発揮されにくい環境にある。
少子高齢化で国内の映画人口が先細りする未来は見えている。今後製作費を海外に求める動きが出るのは自然な流れだろう。とりわけ資金調達が困難なインディペンデント系の作品は、いかに積極的に海外と手を組めるかも生き残りの肝となりそうだ。
ベルリン映画祭に併設される映画見本市には毎年、公益財団法人ユニジャパンが「ジャパン・ブース」を設置する。ここで邦画の海外展開を支援する筆坂健太さんは「文化庁の事業で共同製作の企画に助成金を出し、今年で6年目になる。共同製作が活発となるきっかけになれば」と話す。昨年は劇映画3件、アニメ1件に支援を決めた。