「アメリカ国内での雇用が思うように改善しないと、円安を牽制する発言が増えるでしょう。円高が進めば日本の物価は下がるが、企業業績も賃金も下がるデフレスパイラルの再現となる恐れも」(末廣氏)
一方、前出の斎藤氏は、安倍政権の経済ブレーンである浜田宏一氏が紹介した「シムズ理論」がここへきて急激に脚光を浴びているのが気になるという。
シムズ理論とは、2011年にノーベル経済学賞を受賞した米プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授が唱えている新理論だ。
「財政赤字が拡大するという不安をあおってインフレを起こし、国民の金融資産を目減りさせる政策で、今の日本では明らかにマイナス面が大きい。それなのに、トランプ大統領の財政政策と共通するせいか、物価上昇が遅々として進まないあせりからか、政府や日銀関係者が持ち上げ始めた。こんなトンデモ理論が採用されないよう祈るばかりです」
(ライター・森田悦子)
※AERA 2017年2月27日号