「アメリカのGDPは18兆ドルで日本の約4倍。日本に置き換えれば年間約2.5兆円規模の財政出動となります。財政悪化を懸念する声もありますが、オバマ政権では米国史上最大の軍事費削減を実施し、景気回復効果で税収が伸びたこともあって、財政赤字の対GDP比率はリーマン・ショック直後の10年の12.6%から15年には4.6%にまで低下している。政府債務のGDPも、日本と比較してはるかに健全であるだけに、財政余力は十分にあるのです」

●トランプ支持者は多い

 トランプの財政政策は大半のアメリカ国民も好意的に見ていると考えられる。

「イスラム圏7カ国からの入国禁止措置を打ち出したあとのロイターの世論調査では49%もの人がこの措置に賛成していると答えて、大きな話題を呼びました。世界各国から反発を呼んでいる移民政策で、これだけの支持率なのだから、トランプ氏の財政政策に対する支持率はどれだけ高いのか?という話です。大統領就任式後に真っ先に出したオバマケアの見直しに関する大統領令しかり。アメリカの健康保険料は昨年10月から平均29%も上がっています。中間層は保険料の高さにものすごい不満を抱えているんです。日本人が考える以上に、トランプ支持者は多いと考えて付き合っていくべきでしょう」(横江氏)

 財政政策がフルパッケージで実現した場合には、短期的に景気拡大局面を迎えると見ていいだろう。

●設備投資は未知数

 減税策を巡っては議会が紛糾する可能性もありそうだ。

「法人税を35%から15%まで引き下げることを公約に掲げているが、その下げ幅が大きすぎるうえに、それにより企業の設備投資がどれほど刺激されるかは未知数。共和党内でも反発を呼んで、段階的に引き下げる、ないしは25%程度に落ち着く可能性がある」(片岡氏)

 さらに、現在の所得税率を7段階から3段階に簡素化する減税策は、いつ国民の反発を呼んでもおかしくない内容だ。確かに、所得税を支払う必要のない最低所得層は拡大する。だが、最高税率が39.6%から33%に引き下げられるという点で、実際には富裕層ほど大きな減税効果を享受できるプランとなっているためだ。おまけに、トランプ氏は相続税の廃止も掲げている。「富裕層優遇策」という批判の声が上がれば、妥協案に着地する可能性もある。当然、減税幅が縮小するようならば、GDPの押し上げ効果は薄まる。

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