トランプ氏が以前、人気のリアリティーショー「アプレンティス(見習い)」の最後に、競争の敗者に「You’re fired!(お前はクビだ!)」と言う姿が重なる。フリン氏は、ホワイトハウスで、その最初の“犠牲者”となった。
大統領の側近中の側近であるべきラインス・プリーバス大統領首席補佐官も、トランプ氏の強力な支持者から突き上げられている。
●共和党は政権に見切り
「プリーバスは、フリンを絞首台まで送っていった。これは、トランプ派にとっては、真珠湾攻撃の瞬間だ。彼の忠誠心は、共和党全国委員会に向いていて、大統領ではない」
と、トランプ氏の長年の友人、ロジャー・ストーン氏がツイートした。一枚岩であるべき共和党とホワイトハウスを支持するのではなく、トランプ氏への忠誠を優先するべきだとの異様な発言だ。ストーン氏のように、側近や政権高官は、忠誠心と言いながらも、トランプ氏への影響力と政権内での存在感を強めようと必死だ。フリン氏が消え、プリーバス氏やコンウェイ氏も「風前の灯」とあれば、その高官職を狙う輩もたくさんいる。
与党である共和党も、政権の「機能不全」の可能性に追い風を送っている。共和党が多数派の下院監視委員会は、政府内の利益相反についての調査に乗り出した。ロシアが昨年の大統領選の結果に影響を及ぼしたかどうかという問題に絡み、連邦議会の委員会が複数、調査をしている。政権の「汚点」が今後、議会の手で暴かれていく可能性がある。
「クビだ!」というテレビのセリフを思い出させる犠牲者と自滅寸前の側近たち──。「劇場」のようなホワイトハウスだが、その主は日々、何食わぬ顔で演出にあたっている。(ジャーナリスト・津山恵子)
※AERA 2017年2月27日号