ベアーズ/キッチンで調理中の「ベアーズ」スタッフ・前川千恵子さん(撮影/写真部・長谷川唯)
ベアーズ/キッチンで調理中の「ベアーズ」スタッフ・前川千恵子さん(撮影/写真部・長谷川唯)
まずは薄味で仕上げ、依頼者に味見してもらう。意見を聞き、さらに味つけを調えていく。細かな好みを覚えるのも大切な仕事だ(撮影/写真部・長谷川唯)
まずは薄味で仕上げ、依頼者に味見してもらう。意見を聞き、さらに味つけを調えていく。細かな好みを覚えるのも大切な仕事だ(撮影/写真部・長谷川唯)
オイシックス/「オイシックス」の本社内で開かれたメニュー審査会では、子どもたちが料理の率直な感想を担当者にぶつけていた(撮影/加賀直樹)
オイシックス/「オイシックス」の本社内で開かれたメニュー審査会では、子どもたちが料理の率直な感想を担当者にぶつけていた(撮影/加賀直樹)

 日進月歩の家電の進歩で、家事は驚くほど楽になって…いないのはなぜだ! 気が付かぬうちに“メタボ化”した家事は時に苦役だ。家事は本来生きること。私たちの手に、家事を取り戻そう。AERA 2017年2月13日号では、「家事からの解放」を大特集。

 手に余るなら人に頼む。それがなかなか難しい。正体は罪悪感だ。人気を集める業者は、そんな思いも汲み取っている。家事代行サービスの6千億円市場は、すぐそこまで来ている。

*  *  *

「おはようございます!」

 午前9時半。東京都大田区の医師の男性(46)の自宅マンションに、1人の女性がやってきた。家事代行サービス大手「ベアーズ」のスタッフ(63)だ。子どもたちを保育園に送るために男性が出かけると、スタッフはさっそく春雨サラダ、青菜のあえ物の調理にとりかかり始めた。三つ口コンロと電子レンジをフル稼働させ、牛肉のオイスター炒めやクリームシチュー、サバの味噌煮など計14品を約5時間で完成させた。

●3.11後に利用者急増

 依頼者の男性は共働きで、5歳、2歳、0歳の育児中だ。家族の大好物は麻婆豆腐。スタッフは「薄味で、とのご要望なので、豆板醤は使わずに色々工夫するんです」。保存容器に詰めて粗熱を取ると、冷蔵庫と冷凍室へ次々と投入していった。

 男性がこの料理作り置きサービス「楽ラクうちごはん」の利用を始めたのは、3人目が生まれた直後の昨年2月。それ以前も、診察が土日にもある男性と、フルタイムで事務職をこなす妻は休みが合わず、仕事と育児の両立に忙殺されていた。お互いの休日は、それぞれたまった家事に追われ、子どもとゆっくり向き合う時間がない。決定的だったのは3人目の誕生だった。「もう手が回らない。公園に行く時間もないなんて」

 2人で相談し、「せめて授乳期間だけでも」と、外の力を借りることを決意した。依頼内容は月2回、それぞれ7日分の料理の作り置き。1時間あたりの料金は2800円(税抜き)。月計約3万円の出費だが、子どもたちと公園で遊んだり、宿題を見てやったりする余裕を手にした。「本当に良かった。僕たちが望んでいたことが、ようやく実現できたんです」

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