ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 遂にトランプ政権が誕生しました。メディアの報道は相変わらずで、アメリカの大きな政策転換だとか、ホワイトハウスから白人労働者への権力の移行だとか、ありもしないことを垂れ流しています。アメリカに住んだこともなければ、真剣にビジネスや投資をした経験もないような人たちがどうしてしたり顔でアメリカの現状を解説できるんでしょうか?

 テレビでそういう解説をしているナンチャラ論説委員とかナンチャラ大学教授とか、一体どういう根拠と経験に基づいてそういうことを言っているのか、はなはだ疑問に感じるわけです。

 例えば、あらゆるメディアでトランプ大統領はアメリカ第一主義に政策転換したと報道されています。じゃあ、聞きますが、アメリカがアメリカ第一主義ではなかった時代を教えてほしい。私は30年以上アメリカで仕事をしているのではっきり言いますが、アメリカ第一主義じゃなかった時代なんてない。あの国は(というかあらゆる国は)自国第一主義でずーっとやってきただけですよ。問題は何が第一なのかというテーマが振れているだけ。そもそもトランプ大統領が離脱を表明したTPP(環太平洋経済連携協定)にしたってアメリカ第一主義から推し進めてきた政策であって、その点は揺るぎないのです。自分の都合に合わせてその都度政策が変わるというだけの話です。これまでTPPについて「アメリカのごり押しだ」と散々非難してきた舌の根も乾かぬうちにどうしてアメリカ第一主義への転換などと解説できるのか訳がわかりません。

 また、アメリカの分断とか、トランプ主義とか言われてますが、ここでも書いたように今回のトランプ大統領の得票数は12年のミット・ロムニー氏の得票数とほぼ同数で、トランプ支持者が特別多いという証拠はどこにもありません。ヒラリー氏の敗因は同氏が大統領選でのオバマ氏の得票数を下回ったこと(つまりヒラリー氏の失策)と数字で明らかになっているにもかかわらず、メディアはほとんどこの話題を取り上げません。それではおもしろくない、ということなんでしょうが、そういうメディアに一般の皆さんが洗脳されてはいけません。自分の目で見て、よく考えて判断する癖をつけないと、間違った判断を下すことになりますのでご注意あれ!

AERA 2017年2月6日号