1月20日に行われる大統領就任式。米国一の催事を前に、次期大統領のドナルド・トランプがメディアとの対決姿勢を打ち出すなど、前代未聞の混乱に陥っている。
「南部の木には奇妙な果実がなる/飛び出した眼 苦痛に歪む口/太陽に腐り 落ちていく果実/奇妙で悲惨な果実」(「奇妙な果実」ビリー・ホリデイ)
トランプ政権移行チームが、就任式での歌唱を打診したのに対し、英国の女性歌手レベッカ・ファーガソンは「奇妙な果実」を歌えるなら受けると返答。だが、移行チームがこれを拒否したため、彼女は出演を断った。南部で起きた数千件に及ぶ黒人リンチをテーマにした同曲には、「人種差別」に反対する強烈なメッセージが込められている。
●オバマの熱狂との違い
2009年、バラク・オバマが黒人初の米国大統領に就任した日は、人種を超えたお祭り騒ぎだった。アフリカ・ヒスパニック・アジア系、同性愛者など多様な人々が、首都ワシントンの就任式で、零下の極寒を跳ね返すように浮かれ、星条旗を振った。伝説の黒人ソウル歌手アレサ・フランクリンが歌唱し、チェリスト、ヨーヨー・マが演奏するのに息をのんだ。13年の2期目の就任式では、ビヨンセが国歌を歌った。
一転、次期大統領は、就任式に出演するアーティスト探しに難航している。世界一の国家首脳就任式出演は、名誉以外の何ものでもないはずで、異例のことだ。米メディアによると、ファーガソンのほか、エルトン・ジョン、セリーヌ・ディオン、キッス、アンドレア・ボチェッリらが出演を断った。打診された英国歌手シャルロット・チャーチは「トランプ、インターネットで検索しただけで、暴君だと思ったわ。バイ(大便の絵文字)」とツイートした。
拒否反応は、芸能界にとどまらない。トランプは11日、当選後初の記者会見で、CNNなど一部報道機関を罵倒した。
「お前の報道機関は最低だ」「黙れ」「質問はさせない、フェイク(偽)ニュースには」