姜尚中氏は安倍首相がロシアとの交渉において、楽観的な期待を抱いていたことに「驚きを隠せません」と語る (※写真はイメージ)
姜尚中氏は安倍首相がロシアとの交渉において、楽観的な期待を抱いていたことに「驚きを隠せません」と語る (※写真はイメージ)
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 政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。

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 日ロ首脳会談では大方の予想通り多くの隔たりがありました。安倍首相によるロシアとの交渉、さらには北方領土問題の解決を通じた平和条約の締結、そのための経済協力をしようという意欲は評価したいとは思います。ただあまりにも楽観的な期待を抱いていたことに驚きを隠せません。

 幕末期から明治にかけて大国ロシアは、不気味な脅威と見なされていました。特に三国干渉前後は、ロシアを恐れる「恐露病」が流行しました。歴史を振り返ると、ロシアに対する日本の感情は奇妙なものです。恐露病を抱える一方で、楽観主義的な見方も存在しています。先の大戦末期、旧ソ連が日本に侵攻するだろうということがほぼ確実とされるなか、軍部と首脳のなかには、そのソ連に英米との交渉の仲介役を期待しようとした人もいたのです。

 そして今回も地政学的な合従連衡の考え方に基づいてロシアとの接近を試みました。その中で振りまかれた楽観論。なんと滑稽なまでのオポチュニズム(日和見主義)でしょう。

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