父は、水戸黄門の印籠シーンで有名な脚本家の故宮川一郎。父親が手掛けたドラマの放送は一家で正座して見ていたという。この世界に飛び込んだのも父の影響だが、
「残念ながら脚本の才能は遺伝しなかった」
と笑い、自身の仕事を、
「監督のロマンを実現すること。そのための資金調達とビジネスプラン作り」
だと言い切る。黒衣に徹することが信条だ。
ターニングポイントになったのは02年の「千年女優」だ。
「すっごく面白くて自分でも感動しながら作ったけれど、当たらなかった。僕に製作委員会やチームの意思をまとめる力がなかったからです」
だからこそ今作では、製作委員会に集った14社を前に断言した。
「僕が全てに責任を持ちます」
そうして腹をくくり決定権を一任してもらった結果、製作進行や公開規模の拡大、宣伝プランなどあらゆることに意思を通し、成功につなげた。
しかし、決してワンマンではない。「飲み友達」と呼ぶアニメや映像業界のブレーンは「死ぬほどいる」といい、迷ったときは彼らにアドバイスを請う。
「この作品が成功したことで、既存のテーマや枠組みにとらわれない映画づくりをやってもいいんだ、と思うクリエーターが出てきてくれたらこんなにうれしいことはない」
デジタル配信や海外展開など、アニメビジネスは今、チャンスの入り口にいるというのが真木さんの考え。だから「死ぬまで現役だ」と宣言している。(編集部・竹下郁子)
※AERA 2017年1月2-9日合併号