アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回は東京メトロポリタンテレビジョンの「ニッポンの課長」を紹介する。
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■東京メトロポリタンテレビジョン 編成局局次長 兼 制作第二部長 大川貴史(44)
金曜日夕方5時。皇居に面した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)で、情報番組「5時に夢中!」の生放送が始まった。冒頭、司会者がゲストにツッコミを入れた瞬間、大きな笑い声がスタジオに響いた。番組プロデューサーの大川貴史だった。
通常、現場を仕切るのは課長級であるディレクターの仕事だが、総責任者自ら現場の雰囲気をつくりたいと、生放送番組にも同席するなど、役職を超えて仕事をこなす。
進行中、判断に迷ったスタッフや出演者が大川の顔を見ることがある。その時、笑い返すことで相手に安心感を与えている。スタジオのセットの搬出入にも積極的に参加=写真。出演者の見送りも欠かさない。
「相手を喜ばせることが一番。自分が喜ぶのはその次でいいと思っています」
中・高・大と立教学院で野球部に所属。立教大学では1軍の外野としてプレーした。自称「ムードメーカーかつ親分肌」という性分はまさに、チームプレー向きだ。
大学卒業後、1995年に新卒第1期生として入社。営業現場などを経て28歳で制作部へ異動になり、ADになった。現場へのこだわりはこのとき以来だ。
一人でも多くの人に見てもらうために、電波を通して作り手の「熱量」をお茶の間へ届ける。そのために、命がけで番組作りに取り組む。視聴者の反応、スタッフや共演者とのコミュニケーションを大切にし、できるだけ相手の要望に応えるよう努める。
「直感力はあるから判断が早く、勝負強さはあります」
大切なことは、野球と親から学んだ。
「常に筋道をつけて生きているつもりなので、勝っても負けても自分の生き方に後悔はしないですね」
制作部に移った年に結婚。飲食店を経営する妻と一緒に過ごす時間はいま、「日曜の夕飯くらい」というほど、夫婦ともども「仕事優先」の毎日だ。
(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(編集部・小野ヒデコ)
※AERA 2016年9月19日号