「移転が19年春にずれ込んだ場合でも、側道部分の建設はなんとか五輪には間に合います」(都道路建設部)
●新設BRTにも影響?
だが、片側1車線の暫定道路は周辺の渋滞を考えるといささか心もとない。スペース的には地上に2車線分の道路を造れるようにも思えるが、
「環2はもともと都心部の虎ノ門から臨海部の晴海まで地下トンネルと陸橋で結び、途中に信号を置かない計画。地上部を通す場合は交通量の多い新大橋通りなどと交差するため、片側2車線にすると多量の車がそういった道路に流入してパンクしてしまう」(同)
現在でも環2周辺の道路は断続的に渋滞が発生しており、地元の中央区は今年6月、環2の仮設道路の片側2車線化などを都に要請した。仮に環2が片側1車線のまま東京五輪が開幕すれば、そこを「オリンピック・レーン」にして一般車両を締め出し、都心部─臨海部の道路交通がパンクするおそれもある。環2には五輪期間中の交通手段として、バスを連結させたBRT(バス高速輸送システム)を走らせる予定だが、片側1車線のままではBRTの強みである定時運行や所要時間の短縮が担保される保証はない。
小池氏は会見で「車線の広さは十分だが、加えて信号機の連動などソフト対策を検討する」と発言。
「臨海部との交通では東京港トンネル(国道357号線)も全通するし、五輪までは暫定開業で問題ない」(交通ジャーナリストの清水草一さん)という意見もある。だが、ある都政関係者は、こういう見方をする。
「五輪の話ばかりが注目されているが、環2は現在整備が進む東京港からの物流を担う上でも重要な道路。全通が遅れれば周辺に与えるダメージも大きい」
環2の工事遅延に伴う渋滞や交通の問題はこれから顕在化する。都民の喝采を浴びる知事の決断が後ろ指をさされぬよう、納得のいく説明が求められる。(編集部・福井洋平)
※AERA 2016年12月5日号