「そもそも、都知事と都議会が緊張関係にあり対立軸になっているのが、正常な都政のあり方です。都議会が都知事の言いなりになるなら、都議会が機能していないということです。執行機関を担う都職員としては大変ですよ。私が都庁にいたころでも、知事がこうしろと言っても、都議会を通らない場面はたくさんありましたが、執行機関の職員はそれが正常だと思っていました。すべてを見られるわけではない知事が独占権力を持っては、よい都政はできません」

 都議会自民党の実力者の内田議員はメディアでしばしば都議会の「ドン」だといわれる。だが、それは間違っていると青山さんは指摘する。

「都議会自民党の最大の実力者ですが、内田さんが『右向け右』と言って他の議員たちが右を向くわけではない。それに、内田さんは自身の選挙区や利害にかかわらず、交通料金値上げや福祉改革といった都政の課題に積極的に取り組んできて、実力をつけました。問題を整理して調整、対応する能力が非常に優れています」

 実力があり、頼りになる都議会議員は、都職員からの信頼も厚いのだという。

●「局長級」は企業の役員

 東京都知事は、都政最大の権力者だが、これまでに青島幸男氏、石原氏と作家出身で行政に詳しくない都知事でも都政は回っていく。都知事を支え、粛々と都政を進めていく執行機関はどのようになっているのだろうか。

 執行機関は知事の下に、大きく「知事部局」「地方公営企業」「行政委員会」に分かれる。これらのトップレベルの役職は「局長級」と呼ばれる。

「局長級」には、各局の局長のほか消防総監、本部長、局次長、技監、理事などを含む。特に政策企画局長、総務局長、財務局長は「重要条例局長」と呼ばれ、局長級の中でももっともランクが高い。その下のクラスの局長は、「中二階局長」と呼ばれ、それ以上は出世しないで退職することが多いという。

 なお、豊洲新市場の盛り土問題で揺れる中央卸売市場の市場長も「局長級」のひとつだ。業界団体などとの調整があり責任重大のため優秀な人が多い。

「局長級」は企業で言えば、出世コースを上り詰めた先の役員のようなもの。「重要条例局長」なら社長のようなものだ。「中二階局長」や理事、次長であっても「局長級」になれば、都庁人生の成功でたどりついたゴールといっていいのだ。

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