
逝去を待たずに天皇が退位し、皇太子が新天皇になる──。シンプルなことのようだが、近代日本では直面したことのない事態。生前退位した場合、天皇はなんと呼ばれるのだろうか? 専門家に疑問をぶつけた。
退位後の天皇は何と呼ばれるのか。皇室に詳しい静岡福祉大学の小田部雄次教授(日本近現代史)は、「太上天皇」と呼ばれる可能性が高いと話す。
「古くから、譲位後の天皇は『太上天皇』と呼ばれていました。近代に入り、当時の内閣総理大臣・伊藤博文が譲位を否定したため、旧皇室典範には盛り込まれませんでしたが、草案の第15条には『譲位の後は太上天皇と称すること、文武天皇大宝令の制に依る』という一節があったのです」
23年にわたり宮内庁に勤務し、現在はBSジャパン「皇室の窓」の監修などを務める山下晋司氏も同意見だ。過去には太上天皇が仏門に入り「法皇」と呼ばれるケースもあったが、
「今上天皇が仏門に入るとは考えにくい。新しい呼び名を考えるより、前例のある呼び名をとるのでは」
という。
ある宮内庁参与経験者は生前退位について議論する際、天皇自身が「上皇」という言葉を使ったと記憶しているという。「上皇」は太上天皇の略語だ。
譲位後の住まいについては、識者の間でも見解がわかれた。