アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回は日野自動車の「ニッポンの課長」を紹介する。
* * *
■日野自動車 制御設計室 エンジン設計部 エンジン制御設計グループ長 名越勝之(45)
名越勝之は、子どものときに魅せられて以来、根っからのクルマ好きだ。武蔵工業大学(現・東京都市大学)ではエンジンを研究し、1996年に日野自動車に入社。99年にエンジン設計部に配属されて以降、エンジン一筋の会社員人生を送る。
「ずっとエンジンに携わってこられて、幸せだなあといつも思っています」
国内で一般に販売されている自動車のエンジンは、電子制御化が主流。日野自動車が主力とするトラックやバスに搭載されているディーゼルエンジンも、性能や燃費の向上に加えて、排ガスをよりクリーンにするため、センサーを駆使して細かく燃焼を制御する。名越が担当するのは、すべての車種のエンジン制御。この分野では「社内一、知っている」と自負する。
「もちろん失敗はあります。その調査のために全国の販売会社を飛び回った時などは落ち込みますが、引きずったってしょうがない。気持ちを切り替え、早く不具合を直すことに専念するようにしています」
入社したての若い部下たちにも、苦労や失敗をしても「一番」と胸を張れるようになってほしいと、それぞれに合った適切なアドバイスをするよう心がけているという。
「世界一過酷」といわれるダカールラリー出場車のエンジンも担当している。2週間で約1万キロを走るレース専用車のエンジンは、一般車と違い、まず出力の大きさが求められる。名越は2012年からプロジェクトに携わり、14年からはエンジニアとして3年連続出場。サポートカーに乗り、その場でソフトをチューニングしてドライバーを支え、排気量10リットル未満クラス7連覇に貢献した。
「通常の業務にプラスしてなので大変だけど、プライベートのような気持ちで楽しんでいます」
まさに「フルスロットル」の日々だが、週末は息子とのんびり過ごす。だからこそ仕事もがんばれるのだと思っている。
(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(ライター・安楽由紀子)
※AERA 2016年5月16日号