AGC旭硝子「一発勝負の試作も楽しく」AGC旭硝子 ガラスカンパニーオートモーティブ事業本部 戦略マーケティンググループ主幹 宮本二郎(40)撮影/写真部・東川哲也
AGC旭硝子
「一発勝負の試作も楽しく」

AGC旭硝子 ガラスカンパニーオートモーティブ事業本部 戦略マーケティンググループ
主幹 宮本二郎(40)
撮影/写真部・東川哲也
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 アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。

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 現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。

 あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。

 今回はAGC旭硝子の「ニッポンの課長」を紹介する。

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■AGC旭硝子 ガラスカンパニーオートモーティブ事業本部 戦略マーケティンググループ 主幹 宮本二郎(40)

 ガラス工場は一度火を入れると、24時間365日止めることができない。一度止めるとラインでガラスが固まるなどの支障があるからだ。大量生産向きのため、車の窓ガラスのサンプルを作るにも、数千台分できてしまう。

 2014年、宮本二郎は車の「全周UV99%カット化」プロジェクトのリーダーとして、営業や開発、工場、品質保証などに携わる20人ほどのチームをまとめていた。

 すでに旭硝子では、99%UVカットできるフロントガラスとフロントドアガラスを作っていた。運転席や助手席の女性を日焼けから守ると評判だったが、「後部座席に座る子どもの肌を守りたい」という声があがった。

 それまではガラスへのコーティングなどで、UVをカットしていたが、リアドアガラス、リアガラスにはテレビのアンテナなどを埋め込む必要があるため、UVカットの素材そのものをガラスに練り込まなくてはいけない。大きな挑戦だった。

「ガラスの色も含めて、ラボでは何度も確認して。いけそうだ、となったんです」

 ついにサンプルを生産することとなった。請け負ったのは愛知工場。通常生産を止めての作業だ。失敗したら、億単位の損失になる。緊張したが、1回の試作で成功。世界初の技術となり、すぐにホンダのN―BOXなどに採用された。

「お客様のニーズに応えられたというのがうれしいし、評判を工場の人たちに伝えて、喜んだ顔を見られるのもうれしい」

 1998年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、入社。営業部で国内自動車メーカーを担当した。03年から英国に赴任、08年に帰国し、営業部に戻って11年から現職。

 元ラガーマンで現役のモーグル選手でもある。栃木県に住み、平日は東京まで新幹線通勤、休みは福島などのスキー場で練習する。

「仕事もモーグルも楽しんでやったら結果が出ると思う。皆が楽しく仕事ができるよう、常に前向きに明るくリードしていきたい」

(文中敬称略)

※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです

(編集部・大川恵実)

AERA 2016年3月14日号