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「リターン・トゥ・フォーエバー」の水面をかすめ飛ぶカモメのジャケットはあまりにも有名じゃないですか。

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 カモメのチックはアコースティックとエレクトリックの両刀使いなんです。

 ステージの上にはおのずと両方の楽器が並べられる訳で、特に電気楽器は違った種類のものがいくつも積み重ねられアンプやら種々のコントローラー、更にその上にもコンピュータとそのモニターが乗っけられたりしています。

 アコースティック・ピアノの上にまでシンセサイザーが乗せられて、まさにチックは砦の中で演奏するかのような状態です。

 砦の中の敵を攻撃・・、いや、ミュージシャンを撮影するのは至難の技です、カメラマンにとってはたまったもんじゃありません。

 ギターのように肩から下げて弾くキーボードを持って砦から出てくるのを迎え撃つか、はたまたステージからかなり後ろへさがったところから長玉(でっかい望遠レンズ)でねらい撃つしかないのです。

 しかし、重たい長玉を長時間手持ちで構えるには体力の限界もあって相当辛く、ジャズ専門誌の安いギャラにも見合わないのです。

 ぼくは高いチック砦よりももっと高いアングルから狙えないものかと考えました。

 コンサートホールには真上や舞台ソデからステージを照明するためのライトが数多く取り付けられています。

 ステージの斜め上方からは大光量のスポットライトで舞台の主役に投光するための照明室があります、たいがいのコンサートホールには。

 この時のステージでは使用しないいくつも照明機材が並んでいるだけの部屋があって、ぼくはそこに潜入することにしたのです。

 天性のちゃっかりした性格とチックを撮りたい一心が、ぼくを大胆にしてしまったらしいのです。恐ろしいことです。

 アングルは予想したとおり最高で、ぼくは砦のチックをカモメのように見下ろしてとらえることができたのです。

 ビル・エヴァンスのように終始うつむき加減に演奏するのと違って、チックはいつもヒョウキンなまでにオーバーな動作でメンバーや観客に豊かな表情を見せてくれるじゃないですか。

 演奏中の短いブレイクには決まって何かしらアクションを起こしてくれる。

 実にフォトジェニックなアーティストのひとりではないですか。

チック・コリア:Chick Corea (allmusic.comへリンクします)
→ピアノ・キーボード/1941年6月12日 -