アダルトビデオはいまや、インターネット上のコンテンツ。その影響か、SMプレイが一般化・低年齢化し、思わぬ「被害」が生まれている。
ステージ上には白いワンピース姿の女性。そこに今度は白いスーツ姿の女性が登場し、ワンピース姿の女性に寄り添うようなしぐさをみせたかと思うと、素早く逆さ吊りに縛りあげた。
2016年3月、東京・新宿のストリップ劇場で行われた、NPO法人BDSMセーフティーサポート協会の設立記念イベントでのことだ。
このNPOは、緊縛をともなうSMプレイでの事故を防止するための啓発と、事故が起きた際の支援を目的に設立された。代表を務めるのが、ステージ上のスーツ姿の女性、青山夏樹さん(45)だ。
●見よう見まねでプレイ
青山さんは、ショーやアダルトビデオなどでモデルを縛る仕事を専門に行う「緊縛師」。彼女によれば、10年ほど前まで「余裕のある大人の遊び」だったSMプレイが、05年の風営法改正にともなうSMクラブの相次ぐ閉店で一変。正しい知識を持たない「アマチュア」が、見よう見まねでプレイするケースが増えたという。
「縛られた後で腕が動かせなくなったり、ひどい場合はまひが残ってしまったりする事故が目立つようになったんです」
そういう青山さんもかつて、モデルの男性にケガをさせたことがあった。アダルトビデオで「女王様」を演じ、男性を長時間、後ろ手に縛った3カ月後。その男性に、
「いまは治ったが、ずっとペンを持てなかった」
と告白されたという。
「勉強のため縛られた際、私自身も1カ月ほど右腕が思うように動かせず、不安に思ったことがありました。同じことを人にしてしまった。ずっとつらくて、やりきれない気持ちでした」(青山さん)
日本の緊縛のルーツは、罪人を捕らえ身体の自由を奪うための「捕縄術」だ。愛好家の間では「古典緊縛」とも呼ばれる。これに対し、神経に負担をかけず安全性に配慮したものが「現代緊縛」。青山さんは現代緊縛を行う緊縛師に弟子入りして技術を身に着け、その後、「この技術を伝えるものが途絶えないように」と勉強会を続けてきた。