「プログラミングは問題解決に役立つ」

 初心者向けのプログラミング学習サイト「ドットインストール」を運営する田口元(げん)さんはそう話す。

 ウェブページ制作などに欠かせないHTML、ブラウザー上でプログラムを組めるJavaScript、iPhoneのアプリ開発など、さまざまなプログラム言語やテーマに沿った271のレッスンを動画で配信している。サービス開始から5年で、登録者は約20万人を数えるまでになった。

「プログラミングは基本的に、シンプルな命令を緻密に組むことで実現している。逆向きに見れば、複雑な問題も分解すればうまくいく、という考え方ができる。問題を分解してアタックする。プログラミングを経験した多くの人は、そのような問題解決の“成功体験”を積み重ねていると思います」

 プログラミングのスキルを学べば、コンピューターを自由に操ることができる。その力は開発の場面に限らず、通常のビジネスシーンで直面する問題の解決にも役立つ可能性がある。

 東京・渋谷にオフィスがある、女性の転職支援などを手がけるベンチャー企業。転職希望者向けサービスの責任者を務めるAさん(30)は、工学部出身で学生時代にプログラミングを学んだが、「書き方は記憶の片隅にあるだけです」と笑う。これまで、プログラミングとは縁遠い営業やマーケティング部門でキャリアを重ねてきた。

 そんなAさんにとって、プログラミングとの再会は偶然だった。オフィスの席替えで、エンジニアの同僚の近くにデスクが移った。あるとき雑談のなかで、こんな会話になった。

「『データベースから、こういう形でデータを取り出したい』と言ったら、『できますよ』と返ってきたんです」

●試行錯誤が容易になり次々浮かぶアイデア

 データベースに格納された膨大なデータにアクセスするためのSQLというプログラミング言語を使うことで、さまざまな条件に応じたデータを自由に取り出せることがわかった。Aさんが扱うデータは、利用者向けに発信される求人情報などが記載されたメールで、その数は1カ月間に数十万~数百万通に及ぶ。それらのメールを「届いてから開封されるまでの期間」や「転職が決まった利用者」など、さまざまな条件ごとに取り出し、分析することで、転職成功率が高まるような取り組みを具体化していく。

「それまで使っていた表計算ソフトでは、大量のデータ処理に時間がかかって、データを取り出すだけで1~2時間かかってしまっていた。作業に時間がかかるなと思うと、その作業をどうしても後回しにしてしまうこともありました」

 SQLを使ってデータを取り出す作業は数分で済んだ。通常は専用ツールが必要だが、エンジニアの協力で手持ちのノートパソコンで利用できるようにしてもらった。データの加工に時間がかからず手軽だから、何度も条件を変え、多角的な視点から分析できるようになった。

「試行錯誤が簡単になったので、その結果に基づいて、こんな取り組みもある、あんな取り組みも有効じゃないかと、次々にアイデアが広がっていく。技術が使えることで、これからのビジネスチャンスも広がっていくと思う」

 デートコースやグルメスポット、穴場紹介などの投稿サイトPLAY LIFEを運営するベンチャー、プレイライフの佐藤太一さん(34)は、プログラミングを通して、ものづくりの視点を得た。

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