「殿、利息でござる!」ポスター (C)2016「殿、利息でござる!」製作委員会
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 日本人の誇るべき美徳を描いた映画「殿、利息でござる!」。主演と原作者、それに監督も同じ年生まれ。原作の磯田道史さんと主演俳優・阿部サダヲさんが、映画に込めた思いを語り合った。

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阿部:試写が終わって外に出たら、泣き叫んで騒いでいる男性がいたんです。大丈夫かなと思ったら磯田先生でした(笑)。

磯田:映画を見てあまりに感動したものだから号泣しちゃって。自分の原作(『無私の日本人』<文春文庫>に所収の「穀田屋十三郎」)より良くなってるから、中村義洋監督にまずお礼を言おうとして涙声に。群像劇で一人ひとりがこんなに見事に描かれているとは!

阿部:出てくる人それぞれが面白いし、登場人物一人ひとりにスポットが当たっていますよね。

磯田:初めて監督にお会いした時に、「先生と僕は同い年で、子どもの年も同じです。今の時代に対して同じ責任を持っています」と言われました。この人は僕と同じで、単に映画を作るのではなくて、映画を作って目指す「その先の理想」を考えている。スケールの大きな芸術家に出会えた、と思った。うれしかったですね。

阿部:僕も先生と監督と同じ1970年生まれです。

磯田:監督から「主演は同じ年の人、阿部サダヲさん」って聞いた時は跳び上がるほどうれしかったんですよ! 家で「まだ内緒だけど阿部サダヲさんが主演だぞ」と言ったら、家族じゅうで大喜び。阿部さんなら面白くて泣ける映画になるって。

阿部:そんなふうにおっしゃっていただいてうれしいです。僕は脚本を読んでこれが実話だなんて信じられませんでした。東北・仙台藩の貧しい宿場町の町人たちが、重い年貢から町を救うため、私財をなげうって大金を作り藩に貸し付けて利息を取ろうとしたなんて。しかも、自分たちの行ったことについて掟まで作って、未来永劫口外しないようにつつしむとは。地元の人も知らない話ですもんね。

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