発達障害を抱える子どもたちは、小学校入学でまた壁にぶつかる。診断を受ける割合が増える一方、学校の支援態勢は不十分なケースも多い。教育現場、医療、親たちの手探りの状況が続いている。(ライター・古川雅子)
知的な遅れがほぼない「自閉症」と「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」と、複数の発達障害の特性がある、愛知県在住のカズキくん(仮名)は、小学1年生の秋になり母親に訴えた。
「こころが破れる」
カズキくんは教室の騒々しさや児童同士のいざこざが絶えないように感じられる日常に耐えられなくなったというのだ。
カズキくんは1歳10カ月で「自閉症の傾向あり」と診断された。地元の公立小学校に入学した当初は通常学級に在籍し、苦手な国語と算数の授業だけを特別支援学級で受けていた。
毎日片道30分の道のりを通学するのはやっとで、時には遅刻することもあった。じっと座っていられず教室を飛び出すことも度々あった。それでも比較的大人しい子であり、やんちゃな子たちのいじめのターゲットになりやすかった。コミュニケーション上のすれ違いで、級友とのトラブルもあった。
カズキくんの母親は病院と学校に相談し、1年生の3学期からは支援学級に転籍することに決めた。母親は言う。
「世間一般で言われる『普通でいること』が、障害特性のある子にとってどれだけ大変なのか。実際に学校に通わせてわかったことがたくさんあります」
文部科学省の2012年の調査では、公立の小・中学校の通常学級に発達障害の可能性のある子が6.5%いると推定されている。発達障害などのため、通常学級で学びながら一部の授業を「通級指導」で学ぶ公立の小中学生は、全国で9万人余り(15年度)と過去最高にのぼったことも、文科省から発表された。対象者の内訳は、発達障害に含まれる「ADHD」(16.2%)、「自閉症」(15.7%)、「学習障害(LD)」(14.6%)が大きな割合を占めた。
●支援学校へ押し出し
発達障害のある児童が増える背景には、連載の初回(「理解が追いつかない「発達障害」と生きる 医師も親も迷っている」)で伝えたように、「早期発見」が加速化し、小学校の低学年までに診断されたり、何らかの支援を受けたりしている子どもが急速に増えているという側面がある。だが、学校の対応は追いついていない。