森川:メディア業界を変えようとしているので、メディア関係からは比較的厳しい目で見られますね。
糸井:スタートして間もなくそんなに攻撃的になられちゃうというのは、みんな気になってるんだね。「ほぼ日」を始めた時なんて、全然、警戒もされなければ、お誘いもかからなかった(笑)。森川さんが書いた『シンプルに考える』を読ませてもらって8割がた同じことを考えていると思いました。不安についてもそれを「楽しめ」と。
森川:安定しない時代には、安定はないと思ったほうが、気持ちは安定してくるのかなと。
糸井:でも現実には不安な状況の中で、どうすべきか考えるのではなくて、ただ困ってるという人が多いですよね。みんな困るのが大好き。困ってるほうが利口そうに見えますから。
森川:会議も困ってることを言い合って、すっきりしたり(笑)。
糸井:森川さんは困った状況でも、とにかく考えて、やるんだと。しかもジャンプする時に、もっと困りそうなほうにジャンプするというのが面白い。僕は案外石橋を叩くほうなので大冒険はない。でも叩いて怖いほうに行くみたいなことはある。
森川:感性的な部分が強いんですか?
糸井:感性そのものはどんどん鈍くなってますね。年をとって、感受性が強くなるってことは基本的にないと思います。
森川:え、そうなんですか。
糸井:感受性が強いというのは、目の前で火事が起きてもただ怖がっている状態で、一番何もできないですよね。なんで火事が起こったか、どう消すか、問題の核心に近づくためには、ピリピリしてちゃダメなんです。森川さんも、感受性は昔より鈍くなってるんじゃないかな?
森川:確かに恥ずかしいことは平気でできるようになりました。その分、本質と向き合えるようになったということですかね。
糸井:年を重ねて感受性がゼロに近づいていく。いやあ、これはカッコイイですよ!
(構成・アエラ編集部)
※AERA 2016年4月25日号より抜粋