「私の学校では、ALなんて遠い世界の話です」

 こう話すのは、関東地方の公立小学校で教壇に立つ女性(40)。彼女を阻むのは子どもたちの「学力差」だ。勤務する学校は、給食費の未納額が市内でワースト2位。経済環境が厳しい家庭の子どもが多く通う。小学校4年で九九やカタカナが定着していない児童もいる。語彙(ごい)の乏しさもあって、級友にすぐ手を出すなど、トラブルも絶えない。彼女は言う。

「グループ学習も採り入れていますが、どの子の学力を基準にすればいいのか。1人で40人の児童を見ていますが、半分の20人くらいでないとALは難しい。でも、いま教員数削減の話も出ていますよね?」

 ALは教師の上手な声がけや関与がないと成立しないし、「主体性」の尊重は、一歩間違えると冒頭の中高一貫校のように生徒たちを「放置」することになりかねない。学力の基礎という土台が十分に築けていない子ども同士、あるいは、土台のある子とない子が交じった状態でのAL導入は、簡単ではない。

AERA  2016年2月1日号より抜粋

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