それだけに「場当たり的な対策で、夏の参院選前に配ることを優先したバラマキだ」という批判の声が出ている。

 そもそも、年金生活が苦しくなったのは消費税率が上がって生活費が増えたのに、その分は年金額が増えない「マクロ経済スライド」のためだ。この仕組みは少子高齢化で悪化する年金財政を立て直すために04年に導入されたが、デフレのために封印されてきた。本来、年金額は物価に応じて変わるが、それをストップする仕組みだ。14年の消費増税などで物価は2.7%上がったのに、15年度の年金額はマクロスライドで0.9%しか増えていない。

 マクロスライドは年金額の多寡に関係なく一律で適用される。その結果、基礎年金で買えるものは最終的に3~4割も減る。このため、年金の専門家の間には「基礎年金にマクロスライドを適用すべきではない」という意見も強い。ところが政府は、年金制度を見直さず、「朝三暮四」の故事さながらに税金からの給付金を用意した。

 年金以外でも高齢者の生活は圧迫されている。医療や介護の保険料は上がり、サービスを使う時の窓口負担は増えた。特別養護老人ホームの利用料は、住民税非課税でも貯蓄が一定以上ある人は値上げされた。

 こうした「老人地獄」はそのままで、選挙前に大盤振る舞いしても将来不安が減りはしない。

AERA  2016年1月18日号より抜粋

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