年末商戦に沸く上海の衣料品店。消費は好調が続くが、その間に供給サイドの改革が進むかが、中国経済の行方を左右しそうだ(写真:gettyimages) @@写禁
年末商戦に沸く上海の衣料品店。消費は好調が続くが、その間に供給サイドの改革が進むかが、中国経済の行方を左右しそうだ(写真:gettyimages) @@写禁
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 PM2.5のスモッグに包まれたかのごとく「視界不良」に陥る中国経済。無理な政策のつけが、あちこちで出始めているようだ。

 中国の国内総生産(GDP)は、2000年以降で10倍近く(ドル建て)に膨らんだ。輸出額と輸入額を合わせた貿易総額でみると、中国は13年から米国を抜いて世界最大で、日本を含む「128カ国にとって最大の貿易相手」(中国の王毅(ワンイー)外相)。日本経済にとっても貿易はもちろん、累計で1千億ドル(約12兆円)を投資する相手としても重要なのは言うまでもない。

 尖閣諸島や歴史問題、地域秩序をめぐる対立を抱える日中関係。特に中国経済に対しては、強くても弱くても「脅威」ととらえられる傾向が強い。「アベノミクス」にとって、そのリスクと好機を冷静に見極めることは死活的とも言える。

 中国は1月19日、15年のGDP成長率を発表する。目標の「7%前後」に収まるとみられるものの、11年以降、鈍化傾向が続く。
 
 16年はどうなるのか。国際通貨基金(IMF)の予測は6.3%、世界銀行やアジア開発銀行は6.7%だ。

 習近平(シーチンピン)国家主席は年頭にあたって発表した祝辞で、16年を「小康(ややゆとりのある)社会を全面的に実現する決勝段階のスタートの年」と位置づけた。習指導部は20年までの10年間で、GDPと一人当たりの所得を倍増させる目標を掲げる。その後半に当たるこの5年は平均6.5%の成長を目指しているが、それに向けた正念場との認識を示したのだ。

「向こう5年は経済調整の“産みの苦しみ”の時期だ」

 政権きっての改革派閣僚、楼継偉(ロウチーウェイ)財務相はこう話す。発展途上国が高所得国をめざす過程で、賃金の上昇などが産業競争力の低下を招いて成長が鈍る「中所得国の罠」に、中国は直面している。この5年は、成長のエンジンを投資や輸出から、消費や技術革新に移すための「陣痛期」であるから、「短期的な景気変動はあまり気にしない」とも強調する。

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