かわいい格好で接客や散歩をするだけ、といううたい文句。だが、それは危険な性ビジネスへの誘い水だ。ハードルが下がるなか、被害者に「普通の子」が増えている。思春期の不安定な心のスキをつく犯罪行為の実態とは。(ライター・島沢優子)
女子高生(JK)と散歩ができるという触れ込みで、実際はカラオケやレストランなどでデートする「JKお散歩」や、制服を着た女子高生が個室でマッサージ(リフレクソロジー)を行う「JKリフレ」、折り紙を折らせて下着をのぞく「JK折り紙」。ネーミングにお気軽感が漂うが、すべて未成年による売春の温床になっている。
児童買春や児童ポルノの被害者救済に取り組むNPO法人「ライトハウス」代表の藤原志帆子さんはこう警鐘を鳴らす。
「接客やマッサージといっても、実態は客の性的好奇心に応じるものがほとんど。たくさんの子どもたちが強姦や買春被害に遭っている」
2004年の活動開始以来、のべ4千件、電話やメールで相談を受けてきた。15年は売春やポルノを強要される人身取引被害者の支援を80件行ったが、これは前年の倍以上になる。被害者数など実態調査を国に求めているが、まだ動きはない。
ここ数年で目立つのは、「ごく普通の」高校生が被害に遭うケースだという。
「家庭環境に問題がある子が多いのは変わらないが、一方で何の問題もなさそうな家庭の子、進学校や有名私大の付属高校に通うような女子が、親に言えず相談してくるケースが目につくようになった。彼女たちにとって性的なビジネスへのハードルが下がっているのではないか」(藤原さん)
●父はエリート 進学先に注文
都内に住む20代の女性は、地方の進学高校に通ういわゆる優等生だった。3年生の時、「おしゃれな服を着て稼げるなら、いいかな」と軽い気持ちでガールズバーを訪れた。すぐに風俗と気づき帰ろうとしたら、「今日だけ仕事して。お客さんがいるから」と言われた。嫌がると、バッグの校章を指さした店員から「学校、わかってんだよ」と脅された。わいせつな行為をさせられたが、3回くらい行ってしまった。
「やけになっていた。自分を大切にできなかった」
女性の心が荒れた原因は、父親からのストレスだった。父は旧帝大卒で大手企業に勤務するいわばエリート。進学先には常にハードルの高い注文をつけられた。その父に愛人がいるのを知って以来、家を避けるように。日記には「死にたい。死にたい」と書き連ねた。