「読者モデルにならない?って言われてついていったら、登録料は50万円って。怖くなって逃げてきたけど、住所とか携帯の番号を書いちゃった」
その後実害はないが、一抹の不安は残る。
「あのまま娘が逃げなかったら、AVに出ろと言われたかもと思うとゾッとする」(主婦)
読モ以外にも、ヘアモデル、手先や脚のみのパーツモデルにならないかと誘い、「君、可愛いよ」「スタイルがいいからやってみない?」などとほめちぎりその気にさせる。契約書を書かせ、後で断ると「違約金300万だよ」と脅す、といった手口もよく見られる。サインをしてしまうと、被害届を出せないケースが多いという。
被害者は女子だけではない。
「君、カッコイイね。モデルにならない?」
そんな言葉で誘われたのは名門私大に通う男子学生だった。
「シャツ脱いで上半身だけ見せてくれるかな」などと要求はどんどんエスカレートし、気がついたときには学生証のコピーをとられていた。男子は女子以上にひとりで悩みを抱え込む傾向があるという。誰かに相談するまでに時間がかかるため、傷はより深くなる。
一度撮影されてしまうと、取り返しがつかない。近年AVはDVDではなくネット配信される。一度配信されたら、完全に削除することはまず不可能だ。海外にサーバーがあれば太刀打ちできない。そうやって簡単に大量生産され、子どもたちの性は搾取されていく。
●自尊心が低い 評価と錯覚
スカウトがきっかけでモデルになったり芸能界入りしたりする話が多いだけに、「もしかしたら私も」と思わされる。前出の高1女子のように素直に誘いを受け入れてしまうのだ。子どもたち自身に警戒してほしいところだが、甘い誘いが不安定な思春期の心のスキをついてくる。
心療内科「ポレポレクリニック」(東京都武蔵野市)院長の辻内優子さんが解説してくれた。
「私が出会った性ビジネスに走った子どもたちは、親から何らかの虐待を受けたことのあるケースが多かった。虐待を受けなかったとしても、自尊感情が低く、頑張っても褒められない、評価されない体験を重ねるなか、性ビジネスの世界では若いというだけで、認められ、褒められ、かわいがられる。そのため、自分が評価されていると錯覚してしまう。そのうえ、自分の力でお金を稼げると、嫌いな親がいなくても生きていけるという歪んだ自信をつけることにもなる」
ライトハウスは、さまざまな性被害の実例をもとにした啓発漫画「ブルー・ハート」を昨年制作した。JKビジネスやリベンジポルノなどの危険性を説く。関係施設や学校などに5千部、配布した。
冒頭に登場した20代の女性は今後も、自身の消せない過去の重さを伝えていきたいと言う。
「傷が残らない子はいない。親はもちろん、将来のパートナーや子どもに対し、自分の過去の傷は隠せても、完全に消すことはできない。性犯罪の被害に遭ったのだからあなたは悪くないと言われるけれど、ずっと罪悪感を持ち続けている自分がいる。だから、自分の性をビジネスになんてしないでほしい」
※AERA 2016年1月11日号