
巨額の政党交付金をもらう自民党に、銀行が献金を再開するらしい。本当は乗り気ではないようだが、背に腹代えられぬ事情があった。
全国銀行協会の佐藤康博会長(みずほフィナンシャルグループ社長)は10月の記者会見で「自民党へ政治献金を再開するのか」と問われ、「見返りを求めて行うものではなく、企業の社会貢献の一環として重要性を有している」と答えた。
金融界では「年内に献金再開に踏み切る」との観測がもっぱら。政党の会計帳簿は年末に閉じる。それに間に合うよう「社会貢献」を打ち上げ世論の反応を見た、と関係者は指摘する。
銀行に問い合わせると「対応方針は決まっていない。総合的に判断する」と判で押した公式回答が返ってくるが、本音は、
「経団連からも献金再開を求められている。銀行は行政と関わりが深い規制業種。権力の意向に逆らうのは難しい」(大手銀行関係者)
なぜ大銀行は自民党に融資をするのか。返済の当てはあるのか。全銀協の佐藤会長は会見で「通常の融資です。個別の取引についてはお答えできない」と述べるにとどめた。
銀行は事業にカネを貸し、利益の一部を金利として受け取る。利益を生まない公益法人や個人への融資もあるが、収入や所得を調べ、返済能力があると分かれば物件を担保にとって融資する。
自民党は収益を生まない。主な収入は政党交付金。2015年は170億円配分される。衆参とも与党として過半数の議席を持ち現状は交付金も潤沢だが、政治は「一寸先は闇」。小選挙区制は議席数のブレが大きい。波乱含みの政局で、安定した交付金が入り続けるとは限らない。
リスクある融資には担保を求めるのが通常のルールである。ところが自民党への融資74億円は無担保で実行されている。金融ルールからの逸脱ではないか。
「不透明」な自民党への融資が始まったのは今から25年前、小沢一郎氏が幹事長を務めていたときだ。90年の衆院選を前に、自動車、電機、建設など産業界に献金を割り当てた。そのうえで「献金が実行されるまでのつなぎ資金」として総額150億円の融資を銀行に求めた。政治献金の前借りである。