車いすや歩行器、リフト……従来はローテクの印象がある介護用品。そんなイメージを一新する新製品の数々を紹介しよう。
10月上旬、東京ビッグサイトで開かれた「第42回国際福祉機器展2015」。認知症関連では、「見守り・徘徊(はいかい)防止」のブースに、ひと際大きい人だかりができていた。人気があったのはこんな機器だ。
01年に始まったセコムの「ココセコム」。GPS搭載の小型機を高齢者に持ち歩かせるようにすることで、家族や介護者がいつでも位置を検索したり、高齢者のいる場所に救助者を向かわせたりできる。加入金5千円と月900円~の基本料金などのほか、充電器を買う必要がある。
これまでに、行方不明になった高齢者を助けた件数は7千件以上。「安心を買う」が、介護の領域にも求められているのだ。
靴底にGPS端末をしのばせる、スパイ小説のような新型機をつくったのはチェリー・BPM(東京)。社長の山田玉栄さんが、介護福祉士としての実体験から「さりげなく見守る」ことを求めている認知症のお年寄りや家族の気持ちに寄り添おうと、11年に開発した。「イマココサービス」(靴=1万8千円、端末=5万円)は、靴に埋めこむことで、何かを持たされている、または持たせているという双方の心の重荷なしに、スマートフォンに入れたアプリで確認できる。
「たどったルートも記録されるので、徘徊を困り事ととらえず“おじいちゃん、今日は遠くまで行ったのねぇ”などと、家族の楽しい会話のきっかけになればうれしい」(山田さん)
介護する側の心身をサポートする機器の展示も目立った。
上島電興社(浜松市)がつくった在宅用服薬支援機「お薬のんでね!」(9万8千円)は、薬の飲み忘れ、飲みすぎの防止を狙う。
薬を飲む時間になると、30センチ四方の機械から、音と光とともに、そのとき飲むべき数の薬がケースに入って出てくる。
介護する側が出し忘れるミスを防ぐとともに、「介助されて薬を飲む習慣をつけると介護依存度が高くなってしまう。自分一人で飲めることが、本人の自信につながる」(販売元の近畿メディカル=堺市)。
実際に使っている人からは「85歳の父に、毎日電話で知らせなくてもよくなり、本人も自立してきた」(57歳女性)とか、「75歳の女性が自分で薬を飲めるようになり、嫌がっていたヘルパーの定期的な訪問をやめることができた」(40歳男性)と好評だ。「いつものこと」のストレス軽減が、介護には何より大事だということがよくわかる。
※AERA 2015年11月2日号より抜粋