列島が、2夜連続で沸いた。2015年のノーベル賞は、医学生理学賞と物理学賞で日本人がダブル受賞した。経済力では中国に抜かれ、世界の大学ランキングでも年々存在感が薄まるニッポン。だからこそ、世界に日本人の名がとどろくと、何だか「救われる」気分にもなる。
そして、つい期待してしまう。日本の快進撃は今後も続くのでは、と。
しかし、専門家の間には悲観的な見方が根強い。科学技術社会論を専門にする大阪大学教授の平川秀幸さん(51)もその一人だ。
2004年、国立大学が法人化。国が配布する運営費交付金はこの10年で1割以上減った。研究費の不足は国や各種機関からの研究委託で補わざるを得ないが、煩雑な手続きに時間を取られ、研究に充てられる分が削られがちだ。講師レベルの若手教員では、この10年で研究時間が3割以上減ったという調査もある。
ノーベル賞級の功績を出すには、30~40代でどんな研究をしたかがモノを言う、と平川さんは考える。知力も体力も十分なこの時期に、1時間でも多く研究にいそしむ。それが将来のノーベル賞につながるが、昨今の研究者にその余裕はない。
「線香花火は消える前、一気に燃え上がる。昨今の受賞ラッシュは、その最後の瞬間を見ているようです」(平川さん)
今年の医学生理学賞では、大村さんと共に、中国中医科学院の屠呦呦(トゥーユーユー)氏の受賞も決まっている。自然科学分野で中国人の受賞は初めてだ。