基地問題に揺れる沖縄。そんな沖縄の置かれた状態は、米国人の目にも「異様」に映るようだ。
日本在住の米国人監督、ジャン・ユンカーマン(63)が撮った新作映画「沖縄 うりずんの雨」は、沖縄の歴史を、米提督ペリーの来沖から沖縄戦、占領、日米安保、少女暴行事件、辺野古問題まで縦軸で貫いた野心作だ。
新作の冒頭、同じ米国人の政治学者、ダグラス・ラミスのコメントが流れる。場所は宜野湾市の沖縄国際大学。04年に米軍ヘリが墜落し、「憲法」を超えた「米軍」という存在があぶり出された場所である。
「海兵隊員が次々とフェンスを乗り越えてきて、大学を占拠した。18 歳か19歳の“がきんちょたち”が、海兵隊の軍服を着て、外国の領土に入り込んで年上の報道陣に命令している」
この異様さを、米国人だからこそなおさら感じるのかもしれない。日米地位協定の定めで事故現場は「治外法権」になり、メディアも警察も排除された。
憲法98条に、憲法は「国の最高法規」とある。だが、その上位に日米安保条約や日米地位協定などが存在するのが日本の現実だ。ヘリ墜落事故は「米国の属国」とも言える日本の実態を浮かび上がらせた。少女暴行事件でも日本の警察は容疑者の米兵を逮捕できなかった。
ユンカーマンは新作のなかで、米軍と日本本土による「二重の差別」に沖縄は置かれていると、結論づけている。
「沖縄はいまも米国の戦利品であり、日本政府はそれに異議を唱えない。憲法は沖縄で生かされていないのです」
(文中敬称略)
※AERA 2015年9月28日号より抜粋