子育て世代を悩ませる待機児童問題。ある弁護士によると、待機児童がいる状態は、見方によっては「違法状態」でもあるという。
「フルタイム勤務でも就労形態でポイントに差がつくことがあって、保育園に入れない。その理由もきちんと教えてもらえないのはおかしいと思いました」
東京都杉並区で2歳の息子を育てる中楯めぐみ(39)は、自身が「保活」をしているときから区の姿勢に疑問を持っていた。杉並区は、認可保育園の入園優先度がポイント制になっている。両親ともフルタイムの場合は20点ずつ、夫婦で40点満点となる。それでも、人気園では入れない家庭が少なくない。だが、区からの通知では「理由」は具体的に明記されていない。
同じ杉並区で3歳の娘がいる増田宣佳(38)も、区の対応は「おかしい」と感じた。娘を1歳児で入園させようと区に聞くと、「待機児童は30人」と言われた。しかし、申し込みに行くと「1歳児で認可は無理ですよ」と言わんばかりの態度だった。
「後で、待機児童のカウント方法がおかしく、もっと深刻な状況だとわかった。声を上げようと思いました」
2人は区に異議申し立てをした「保育園ふやし隊@杉並」に参加し、今も活動している。
「異議申し立ては法律で認められた権利です。児童福祉法24条は、保育の必要な児童には、自治体が保育を実施する義務を課している。つまり待機児童は“違法状態”と言えるのです」
こう語るのは弁護士の大井琢。自治体が認可保育園の入所を認めるか否かは「行政処分」。もし「入所不承諾」なら、処分に至った理由を市民に説明する必要がある。だが、自治体からは十分な説明がない。これは憲法違反にもなるという。
「合理的な説明がないなら、入所を不承諾とされた者は『差別的な取り扱い』を受けたことになり、憲法14条が定める『法の下の平等』に反します」(大井)
(文中敬称略)
※AERA 2015年9月28日号より抜粋