津田賀央さん(撮影/編集部・鎌田倫子)
津田賀央さん(撮影/編集部・鎌田倫子)
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 都会の生活には限界を感じているけれど、田舎に引っ込むのにも抵抗がある。そんな人には、両方に生活と仕事の軸足を置く手がある。

 特急あずさから新宿駅のホームに降り立つと、少し頭痛がした。ノートパソコンやきゅうりやなすが入ったリュックが重いからではない。1100メートルの標高差による気圧の変化に、身体がまだ慣れていないためだ。

 大手家電メーカー勤務の津田賀央(よしお)さん(37)は今年5月、八ケ岳のふもと、長野県富士見町と東京の2拠点ライフを始めた。

「野菜は庭の畑で採れた。同僚におすそわけすると喜ばれる」

 津田さんは田舎暮らしの豊かさを強調するが、単に週末にリフレッシュするための2拠点ライフではない。住まいだけでなく、仕事の拠点も東京と富士見町にあるのだ。会社員でありながら、自身で会社を立ち上げ、富士見町が計画するテレワークタウンのプロジェクトに携わる。

 昨年10月、会社の上司に自らプレゼンし、副業を認めてもらった。上司にはこう訴えた。

「日本のワークスタイルを変えていきたい。家族も大事にしながら、都会から得られるものを地域に還元していきたいんです」

 最初は怒っていた上司も最後まで話を聞くと「腹に落ちた」と理解を示した。役員の許可も得て、週3日だけ会社に出勤。残りの4日間は、富士見町の一軒家に家族4人で暮らす。

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