アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はキリンビールの「ニッポンの課長」を紹介する。
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■キリンビール マーケティング部ビール類カテゴリー戦略担当機能系グループ ブランドマネージャー 中川紅子(42)
発泡酒市場で昨年9月に始まった競争は、その激しさから業界でこう呼ばれている。
「ゼロゼロ戦争」
痛風の原因とされるプリン体の「0」と、糖質の「0」を達成した商品を、大手各社が相次いで投入したのだ。戦いは今年に入ってさらに激しさを増し、「機能系」市場は拡大の一途。キリンビールの中川紅子は、この最前線に立っている。
大学卒業後、キリングループの機能性食品会社に入り、主にマーケティング部で働いた。会社の解散に伴って、いったん外資系製薬会社に勤めたが、新商品の企画にチャレンジしたいと、2012年にキリンに戻ってきた。
機能系グループの「課長」には、この1月になったばかり。3月、ゼロゼロ戦争をリードしてきた「淡麗プラチナダブル」のリニューアルを担当。6月には、ノンアルコール・ビールテイスト飲料「パーフェクトフリー」も市場に投入する。極限まで行ったかに見えるこの市場で、中川がグラスの向こうに見すえるのは、「原点回帰」だ。
「発泡酒でも新ジャンル(第3のビール)でも、求められるのは『ビールとしてのおいしさ』。単に健康にいいだけでは満足してもらえません。いよいよ、そういうステージに入ってきたのです」
ひとくちに「おいしさ」と言っても、実現するのは容易ではない。
「色、泡、のどごし、キレ、苦み。ビールで人がおいしいと感じる点はいくつかあるんですが、プリン体や糖質をカットすると、その分、旨みは減る。それをどう補うかが大事」
新商品を一つ開発するために、数十回の試作を繰り返す。酵母は? ホップの種類や配合は? 開発チームと知恵をしぼり、ラベルにもこだわる。
もはや機能系が「ビールの代わり」である時代は過ぎた。おいしくて、機能的。そんな二兎を追う。(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(編集部・岡本俊浩)
※AERA 2015年6月1日号