内視鏡下手術ロボット「ダヴィンチ」。医師がモニターを見ながらロボットアームを操作する。胃がんなどで先進医療になっている(写真:静岡県立静岡がんセンター提供)
内視鏡下手術ロボット「ダヴィンチ」。医師がモニターを見ながらロボットアームを操作する。胃がんなどで先進医療になっている(写真:静岡県立静岡がんセンター提供)
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 広く知られるようになってきた「先進医療」という言葉。がん治療などにおいて光明となる場合ももちろんあるが、一方で誤解する人も少なくないようだ。

大腸がんが脳と肺に転移しています」

 2012年9月、製薬会社に勤務していた河野文彦さん(53)=仮名=は、大学病院の担当医からこう告げられ、愕然とした。

 ただ、大腸がんは転移しても、局所治療できることが少なくない。脳の転移巣は手術と放射線治療が行えたが、肺のほうは心臓に近い場所だったため、手術も放射線療法も難しく抗がん剤治療をすることになった。

 妻が持ってきた週刊誌に「先進医療」の特集が載っていた。そこで紹介されていたのが、病巣にピンポイントで照射でき、周辺組織への影響が極めて小さい「陽子線治療」だった。

 これに懸けてみたいと思い、主治医に相談したところ、「受け入れてくれる病院があれば紹介状を書く」と言われた。当時、陽子線治療を実施していた病院のうち2件には断られたが、3件目で治療可能と診断された。

 河野さんが受けた陽子線治療は、「先進医療」として実施されているものだ。言葉の響きから最先端の夢の治療法のようにも思えるが、本当なのか──。

 06年からスタートした先進医療制度(保険外併用療養費制度)では、保険が適用されない医療行為のうち、一定の条件を満たしたものを厚生労働大臣が登録。保険適用に値するかを厚労省が評価していくことになった。

 保険適用外の治療は全額自己負担の「自由診療」になるのが原則だが、先進医療の場合、その技術料のみ自己負担で、それ以外の検査料や入院費などには保険が適用される。通常禁止されている保険診療と自由診療を同時に行う「混合診療」が、例外的に認められるのだ。

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