どんなに固く締めたネジでも、時間が経てばいずれ緩む。有史以来の常識を覆す技術革新を、6年前に設立された総勢20人ほどのベンチャー企業が実現しようとしている。
東京都内のNejiLaw(ネジロウ)の実験施設で5年ほど前に行われたネジの試作品のテスト。世界で最も厳しいとされる米国の基準に則り、専用の試験装置で振動や衝撃を与えてどれだけ緩まずに耐えられるかを判定するものだ。規定の17分が経過しても、緩む兆しはない。
道脇裕社長(38)らは別室に移り、中断を挟みながら地下室で装置を回し続けた。10時間近くも経ったころ、けたたましい異音が響いた。地下室に飛び込むと、厳重な緩み止め対策が施された試験装置自体のネジが外れて飛び散り、壊れた装置が弱々しく振動を続けていた。装置に固定されたネジの試作品は……まったく緩んでいなかった。
「『緩みにくいネジ』はごまんと考案されてきた。私が発明したのは『緩まないネジ』です」
道脇さんは言ってのけた。2千年を超えるネジの歴史は緩み対策の進化の歩みでもある。実用化されてきた「緩みにくいネジ」は、ボルトとナットの形状を工夫して摩擦力を強め、緩みにくくしたものが主流だという。これに対してNejiLawの「L/R(エルアール)ネジ」は、特殊な構造のボルトに、それぞれ左と右に回して締める二つのナットを同時に組み付けて固定できる。片方を緩ませる力が加わっても、もう一方が締まるため構造的に緩まない。
評判はたちまち広まり、東京都のベンチャー技術大賞や国のグッドデザイン賞金賞も受賞した。